長峯基先生の人間学講義

本日の「咢堂塾」では、元参議院議員で総理府総括政務次官(現・内閣府副大臣)を務められた長峯基(ながみね・もとい)先生にご講演を頂きました。

毎回、永田町で開催する「咢堂塾」では、専門家による講義と塾生同士のディスカッションを通じて、政治・政策に関する知識を深めます。しかし、それだけでは意味がありません。そこで学んだ知識を、何のために、どう生かすか――それを問い続け、自らの信念と使命を固めていく場が「咢堂塾」です。

長峯先生の人間学講義は、まさに「咢堂塾」に魂を入れるものと言えます。

本日の講義で、長峯先生が真っ先に挙げられた『論語』の言葉。
「君子は義に喩(さと)り、小人(しょうじん)は利に喩る」

自分の利益になるかどうかを考えるのではなく、何が公に正しい道かを考えて行動することの大切さ――まさにリーダーとして咢堂塾で学ぶ塾生が最も心得ておきたい言葉です。

長峯先生の講義では、『論語』や『言志四緑』(佐藤一斎)などが取り上げられます。ご存じの通り、それらを扱った本は巷に溢れ、また多くの識者が「語って」います。

なぜ、尾崎財団「咢堂塾」は、長峯先生をお招きするのか――。
それは、長峯先生が、論語の「語り部」ではなく、「実践者」だからです。

政治家として、また一人の人間として、どこまでも純粋に「世のため、人のため」という思いで行動し続け、様々な経験を積まれた長峯先生の言葉だからこそ、論語や言志四緑の「一文」が輝き、説得力を持つのです。

実践者であり、また後進を育てる教育者でもある長峯先生に、これからも大いにご指導を賜りたいと思います。


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公党の精神

第48回衆議院議員総選挙の投票日まで、一週間を切った。

少なくとも戦後に行われた総選挙のなかで、今回ほど「政治家の矜持」が試され、また失われたものはないのではないか。
整合性も実現性も乏しい付け焼刃の政策と、真新しい看板に飛びついた候補者の「嘆き節」はどうでもいいが、われわれ有権者は嘆いてばかりもいられない。

政党間における「政策の論争・競争の末に」もたらされる政権交代は、民主政治の成熟と、より良い国家・社会づくりには必要だ。

ただ、目的と手段をはき違えてはいけない。

政権交代を目的化し、そのために主義や政策を捨て去ることは「政党政治の死」を意味する。

「政権交代のためには政策は二の次で、まずは数の結集こそが政治のリアリズムだ」という意見も、元政治家の識者の一部に見受けられる。しかしそれは政治家・候補者の論理であって、国民・有権者の論理ではない。

与野党問わず、国家・社会の在り方と政策を真摯に提示するのが政党・公党の役割だ。

「公」ではなく「私」のために、政策実現よりも自己保身のためになされる数合わせや離合集散は、国民の政党不信、政治家不信を助長させるだけだ。

「日本に真の政党政治を」と愚直に説き続けた尾崎行雄は、今からちょうど70年前に書いた『民主政治読本』の中で、次のように言っている。

「立憲政治は政党がなければ、やっていけない政治である。私はほとんど過去半世紀以上にわたり、あらゆる非立憲的勢力をはねのけて、名実兼ね備える政党政治を実現することに尽力してきた。そしてこの目的を達成するためには、何としても本当の政党をつくらなければだめだと思って、ずいぶん骨を折ってみたが、どうしてもだめであった。政党の形だけはすぐできるが、それに公党の魂を入れることがどうしてもできない。日本人の思想・感情がまだ封建時代をさまよっているために、利害や感情によって結ばれる親分子分の関係と同型の私党はできても、主義・政策によって結ばれ、国家本意に行動する公党の精神は、どうしても理解できないのであろう。力をめぐって離合する感情はあっても、道理をめぐって集散する理性がないからであろう。」

70年前の咢堂の指摘が現在の日本政治に当てはまるとすれば、国民にとっては悲劇以外のなにものでもない。

ただ、私党に「公党の精神」を吹き込むのは、われわれ有権者の役割でもある。
今回の総選挙は、政策の中身と同時に、政策に対する各党の姿勢、政党政治の在り方そのものも問われている。


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解散総選挙―政党間で政策論争を

急に強まった解散風。
「10月10日公示・22日投開票」が有力とされる。

野党第一党の民進党からは、大義の無い「自己保身の解散だ」という批判の声が上がっている。

確かに、回復傾向にある内閣支持率、民進党からの離党者の続出、そして新党の準備不足というタイミングで、「今なら傷は最小限ですむ」という考えが首相の頭をよぎったとしても不思議ではない。

ただ、解散総選挙がどのような思惑・タイミングで行われようとも、選挙は有権者にとって、これまでの政権運営と政策に対して評価・判断を下す重要な機会である。

野党が首相に対し「伝家の宝刀の抜き方が卑怯だ」といくら批判しても、国民のためにはならない。むしろ、これを機会に、安倍政権がこれまで進めてきた、またこれから進めようとしている外交・安全保障政策、経済・財政政策、社会保障政策などに対して論理的な批判と対案(選択肢)を示し、政策論争を深めるべきだ。

そのほうが、国民の利益につながるだけでなく、野党・新党自らの存在意義を示すことにもなるだろう。

真の政党政治を実現させるべく尽力した尾崎行雄は、今から約90年前、当時の政党について、「過去のしがらみや利害・感情で結びつき、政策競争をせず、本来の目的(国家・国民のための政策実現)を忘れている」と喝破した。

90年を経た今の日本はどうか。

与野党間・政党間での政策をめぐる論争・競争が政党政治には不可欠である。
各政党が内外情勢の現実を踏まえた上で何を最重要課題と位置づけるのか―その優先順位の付け方も判断材料となるだろう。そこを厳しく問い質し、見極める目が有権者に求められる。


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東京都議会議員選挙の「投票心得」

1年前の6月25日、拙著『18歳からの投票心得10か条』の出版記念パーティーが憲政記念館で開催されました。その3日前の22日、参議院議員通常選挙が公示され、7月10日が投開票日というタイミングでした。

私は挨拶の中で、「この本は、政治や選挙と初めて向き合うという若い人たちに読んで頂きたいと同時に、これまでの政治や選挙のあり方に慣れてしまった大人の皆さんに、もう一度、その本質を見つめ直す意味で読んで頂きたいのです。そしてこの本は、『投票率を高める』ことよりも『投票の(一票の)質を高める』ことが大切だという思いで書きました」と述べました。

それからちょうど1年後の今、舞台は国政から都政に移り、都議会議員選挙の真っ只中です。
『18歳からの・・・』には、憲政の父・尾崎行雄が掲げた投票心得を10項目に整理して載せています。それは国政選挙を対象にしたものですが、地方選挙に対しても多くの示唆を与えてくれます。以下3つほど紹介します。

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第1条
 何よりもまず、自分はいかなる政治を希望するかという自分の意思を、はっきり決めてかかることが大切だ。選挙は、国民の意思を国政に反映させるために行われる。つまり、反映する本体がしっかりしていなければならない。有権者自身に政治的意思――どのような政治、どのような国・社会を実現したいと考えるのか――がなければ、いくら投票しても意味がない。


第2条
「出たい人より、出したい人を!」――これは先年、東京市政刷新運動が起こった時、以前東京市長を務めていた人から標語を募ったことがある。その求めに応じて私がつくった標語である。候補者自身の〝出たい〟という意向よりも、有権者の側の〝出したい〟という意向が重視されること。有権者のための選挙である以上、こうあるべきが当然だ。


第7条
 演説会場その他あらゆる機会をとらえて、有権者は各政党または候補者に向かって、具体的な政策を明示するように要求しなければならない。そして政党本部で発表した政策と候補者の言質(げんち)を箇条書きにして、台所の壁にでも貼っておき、実行された公約の上には○をつけ、実行されなかった公約の上には×をつけるようにすること。公約を裏切った政党や議員に対しては、次の選挙の時に絶対に投票しないことを覚悟すれば、政党も議員も、完全に有権者によってリードされるようになる。
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国政であれ地方政治であれ、有権者として、どのような国・社会を希求し、そのためにどのような政策が望ましいかを自らの頭でしっかりと考え、候補者に厳しく問いただしていく姿勢が求められます。そして何より、選挙の主役は候補者ではなく有権者であるという自覚と責任感が求められます。

レッテルを貼り、一方的に他候補(他政党)を誹謗中傷するような言説は論外として、公約に掲げられた政策が、単に聞き心地の良いイメージ先行型のものでないか、財源の裏付けに乏しい付け焼刃のものでないか、また候補者の党籍・主義主張の変更が本当に都政のために行われたものかどうか(=自らの当選・自己保身のためでないか)、都民は厳しく見極めていかなければなりません。

6月23日に告示された東京都議会議員選挙。投票日は7月2日です。


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第69代全米さくらの女王と伊勢来訪

第69代(2017年)全米さくらの女王のサマンサ・オルセンさんと、シャペロン(後見人)のバレリー・クレメンスさん、そして取材兼通訳の浅霧勝浩・INPS JAPAN理事長と私の計4名で、6月4・5・6日と伊勢に行ってきました。

毎年この時期、全米さくらの女王は日本を訪れ、首相や衆議院議長、都知事などを表敬訪問し、日米の友好促進の役割を果たしています。今年は、5月30日に小池百合子・東京都知事、31日に安倍晋三首相を表敬訪問しました。

「全米さくらの女王」といえば「尾崎行雄」です。
女王は、毎春開催される「全米さくら祭り」(Cherry Blossom Festival)で選出されますが、この祭りのきっかけとなった桜は、1912年、当時東京市長を務めていた尾崎行雄が東京市から公式に贈ったものです。

そして、尾崎といえば、彼を連続25回当選させ、63年間国会に送り続けた「伊勢」です。その伊勢で咢堂精神の普及に努めるNPO法人・咢堂香風は、1915年に桜の返礼として米国から送られたハナミズキにちなみ、毎年「花みずきの女王」を選出しています。そして、全米さくらの女王を伊勢に招聘し交流を深め、「日米友好の架け橋」となっています。

今回も、咢堂香風のお招きによるもので、理事長の土井孝子さんを筆頭に、伊勢の方々の「あたたかい心」に触れた女王は、大変感激していました。

女王たちは、伊勢神宮、二見興玉神社(ふたみおきたまじんじゃ)、皇學館大學(神道博物館)などを巡り、美しい自然と日本の精神性に触れました。また、咢堂記念館や伊勢市長、三重県知事を訪問し、咢堂精神に触れました。さらに、御木本真珠島(御木本幸吉は尾崎行雄を物心両面で支援した人です)や伊勢パールセンターでは美しい真珠やその歴史に触れました。そして、咢堂記念館では横輪さくら、朝熊山麓公園ではハナミズキの記念植樹を行い、改めて「尾崎行雄の桜と返礼ハナミズキの歴史と意義」を振り返りました。

女王は、全てのプログラムに感動し、このプログラムを企画・実現した土井理事長に、「自身の学びが深まったこと」を大変感謝していました。

私自身も、女王に同行する中で、改めて、伊勢の方々の「思いやり・おもてなしの心・あたたかい心」を実感し、そして土井理事長の情熱に元気づけられました。機会を頂ければ、またぜひ参加したいと思います。

全米さくらの女王の記事
 → 伊勢来訪の記事(6月7日付 伊勢新聞)
 → 三重県庁来訪のプレスリリース(6月1日付)

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追記:
本日(7日)朝、サプライズで女王が憲政記念館に来てくれました。職員の皆さんも突然の出来事でしたが、嬉しく大歓迎! 女王から素敵なプレゼントも頂きました。(以下はそのときの写真)

2017全米さくらの女王 憲政記念館 (3)

2017全米さくらの女王 憲政記念館 (2)

2017全米さくらの女王 憲政記念館 (4)

2017全米さくらの女王 尾崎ホール

2017全米さくらの女王 憲政記念館

2017全米桜の女王 憲政記念館館長・副館長・課長


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プロフィール

石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
    理事・事務局長
**********************

【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
(2013年)


石田尊昭 心の力
石田尊昭著『心の力』
(2011年)


50の言葉
石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
(2009年)


咢堂言行録
石田尊昭/谷本晴樹著
『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
(2010年)


石田著作
相馬雪香・富田信男他編
石田尊昭(年譜編纂)
『咢堂 尾崎行雄』
(2000年)

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