相馬雪香さんの言葉の力とリーダーシップ

今年は、尾崎行雄三女・相馬雪香(そうま・ゆきか)さんの没後10年にあたります。

去る6月14日、第40回女性経営者物流セミナー(主催:東京都トラック協会。企画・運営:東京都トラック協会女性部)で講演をさせて頂きました。テーマは、「相馬雪香さんの言葉の力とリーダーシップ」。

相馬さんの没後10年という節目に、相馬さんの信念や生き方についてお話しする機会を頂けたことを大変光栄に思います。

当日の参加者は、すでに強いリーダーシップを発揮し、活躍されている女性経営者の方々でした。そんな皆さんにとって、私の話す「相馬さんのリーダーシップ」は、すでに日々実践されている、「当たり前」のことだったかもしれません。にもかかわらず、本当に熱心に耳を傾けメモをとって下さる姿に、講演中ずっと感激していました。
改めて、主催者・参加者の皆様に心から感謝申し上げます。(講演終了後、拙著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』『心の力』も完売して頂きました。有り難うございました。)

テーマは「相馬雪香さん」についてでしたが、講演時間の約半分は、相馬さんの父であり、憲政の父でもある「尾崎行雄」について話しました。なぜなら、尾崎を語ることが、そのまま相馬さんを語ることにもなるから。そのくらい両者には、強い絆と共通の信念・生き方があると思っています。

相馬さんは政治家にはなりませんでしたが、常に「世界の中の日本」という視点を持ち、社会や国はどうあるべきか、そのために自分には何ができるかを本気で考え、できることから行動を起こしました。自分の利害得失ではなく「世のため、人のため」という思い。しがらみや権威にとらわれず「誰が正しいかではなく何が正しいか」を問い続ける姿勢。権力に迎合せず、同時に国民に有権者としての厳しい自覚を説き続けた相馬さん。まさに、父・尾崎行雄がそうであったように。

当日の講演を、国際通信社「INPS Japan」理事長兼マルチメディアディレクターの浅霧勝浩さんが収録・編集して下さいました。
以下の動画は、当日の講演時間の約半分(40分程度)ですが、ポイントを絞り込んで、わかりやすくまとめて頂いています。尾崎と相馬を大事に思い、自身もグローバルな視点で「声なき声」を伝える浅霧さんならではの編集です。感謝申し上げます。

講演『相馬雪香さんの言葉の力とリーダーシップ』(石田尊昭)


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尾崎行雄と立憲主義

日本国憲法施行から71年を迎える今年は、憲政の父・尾崎行雄の生誕160周年でもある。尾崎は1890年の第1回総選挙から第25回まで連続当選し、60年以上にわたり衆議院議員を務めた。1912年の憲政擁護運動では犬養毅と共に「憲政の神」と呼ばれた。

「憲政」とは立憲政治のことである。立憲政治は、「多数国民の生命・財産その他の権利・自由を保障」することを目的に、「立法部の多数を基礎とする政党内閣」が行う政治だと尾崎は言う(『政治読本』1925年)。

独裁者や一部の特権的勢力が独善的に振る舞う「人の支配」ではなく、国民が正当な選挙で選んだ代表者が、国民の人権を守るために、憲法に基づいて政治を行う「法の支配」。尾崎は、この立憲政治の確立に一生を捧げた政治家だ。

ここ数年、政治の場で立憲主義という言葉が頻繁に使われ、政党名に立憲という文字を入れたものまで現れた。そして現政権を「立憲主義違反」だと激しく非難している。
仮に「多数国民の生命・財産その他の権利・自由を奪う」ことを目的とした、あるいはそうなることが明らかな法律を、正当な選挙を経ず、独裁政権の下で国民を弾圧しながら成立させているのなら、明らかに立憲主義違反である。

尾崎が活躍した明治から昭和初期は、検閲によって新聞や雑誌がたびたび発行禁止処分となり、また選挙公報も黒塗りとなった。新聞記者や民権運動家の中には激しい拷問を受け獄死するものもいた。若き頃の尾崎は保安条例によって東京から追放された。そして1942年の第21回総選挙(いわゆる翼賛選挙)では、尾崎を含む非推薦候補者は弾圧を受け、尾崎は演説直後に「不敬罪」で巣鴨拘置所に入れられた。立憲主義違反とは、まさにこういうものである。

尾崎は、制度としての憲法よりも、国民に立憲主義の精神を根付かせることのほうが重要だと考えた。明治憲法は欽定憲法であり、人権保障も「法律の範囲内」という条件付きのものだったが、それでも国民が立憲主義を理解し、その精神を身につけさえすれば、上手く運用して立憲政治が実現できると考えたのだ。

尾崎は、執筆や演説を通じて、特に有権者に向けて立憲主義を説き続けた。立憲政治の実現のためには、理念・政策で結びつき、国家国民のための政策論争ができる真の政党が必要だが、それを育み、選ぶのは、後にも先にも有権者だからだ。

国民に立憲主義が根付くことの重要性は昔も今も変わらない。だからこそ、立憲主義という言葉を、倒閣目的のスローガンやイメージ戦略で安易に使うべきではない。与党も野党も、そして我々有権者も、今一度、立憲主義の歴史と意義を冷静に見つめ直す必要があるのではないか。


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相馬雪香さんに学ぶ「心の力」

憲政の父・尾崎行雄が74歳の時の言葉――「人生の本舞台は常に将来に在り」。
何歳になっても「昨日までは予備門で、今日以後が本領を発揮する時である」という、とても前向きで力強い言葉です。

尾崎行雄は95歳で亡くなりましたが、その前年に「初落選」するまで、実に60年以上にわたり衆議院議員を務め、文字通り「生涯現役」を貫きました。

その尾崎の三女、相馬雪香さんが亡くなって、今年でちょうど10年を迎えます。
相馬さんは96歳で亡くなりましたが、その数カ月前まで講演をしたり、式典でスピーチをするなど、父親同様「生涯現役」でした。

私は、相馬さんが84歳の時に出会いました。それからわずか12年ほどですが、濃密な時間を過ごすことができ、多くを学ばせて頂きました。相馬さんは、孫ほど歳の離れた青二才の私を「目的を共有し、共に行動するパートナー」として尊重してくれました。だからこそ、いつも「本気の議論」をすることができました。

相馬さんの言葉には「力」があります。それは単に語彙や表現力の問題ではなく、心の内から湧き起こるような力です。相馬さんが亡くなった翌年、私は『相馬雪香さんの50の言葉』という本を書きました。そこに出てくる言葉は、いずれも「どこかで聞いたことのあるような」ものばかりです。しかし、相馬さんから発せられると、それは周りを動かす力になる。なぜなら、その言葉は、嘘偽りの無い相馬さんの「心そのもの」だから。相馬さんの「言葉の力」は、「心の力」です。

東日本大震災の翌年、私は、相馬さんのリーダーシップについて触れた『心の力』という本を書きました。相馬さんには4つの心――「本気の心」「純粋な心」「利他の心」「感謝の心」がある。そして、そこから湧き起こる言葉と行動力(リーダーシップ)が周りの人たちを惹きつけ、動かしていく。

この10年。私は、相馬さんの「言葉」ではなく「心」を一人でも多くの人に伝えたいと思い、書いたり話したりしてきました。せっかく機会を頂いても、まだまだ伝えるべきことを伝えきれていません。まだまだ相馬さんの「心の力」を私自身の中に生かすことができていません。葛藤、迷い、後悔、失敗の連続です。

しかし、ここで止まるわけにはいきません。「反省っていうのは、止まるためじゃなくて、進むためにするんですよ!」――相馬さんの怒声、いや叱咤激励を想い起こしつつ・・・。これまでの10年の経験を、これからの10年(本舞台)に生かす。「相馬雪香没後10年」の節目に、改めて決意しているところです。

《想い出ポロポロ》
 憲政記念館のレストラン「霞ガーデン」で、二人でよくお昼を食べました。私は「カツカレー」か「日替わりランチ」でしたが、相馬さんはほぼ毎回「ふわふわトロトロのオムライス」。しかし、それは結構なボリュームなのです。そして毎回、半分ほど食べて、残りを「はい、石田さん、食べて」と可愛らしく言うのです。出来立てはトロトロでも、食べかけは・・・なんというか、味は同じですが、やはり見た目が・・・。「食べる前に分けて下さい!」といつも叫んでいました、心の中で。(もちろん美味しく完食です!)


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「できることから始める」相馬雪香さんの信念と生き方

尾崎行雄の三女・相馬雪香(そうま・ゆきか)さんと出会ったのは、1996年。

日本のNGOの先駆けとなった「難民を助ける会」の創設者であり会長、そして尾崎行雄記念財団では副会長(会長は時の衆議院議長)として指揮を執り、メンバーの精神的支柱でもあった相馬さんは、私にとって「雲の上の人」でした。

当時、相馬さんは84歳、私は24歳。
政界の御意見番のごとくテレビや新聞に登場し、時には国会議員を直接呼んで「叱咤激励」していた相馬さん。かたや、学業を終えたばかりで社会経験もろくに無く、口を開けば青臭いことばかり言う、孫ほど歳の離れた小僧・・・。

しかし相馬さんは、そんな私といつも正面から向き合い、真剣に議論してくれました。相手が大臣であろうが、小僧であろうが、相馬さんが投げかける「民主主義と平和」への強い思い、言葉は全く同じものでした。

相手が誰であろうと、分け隔てなく、「良いもの良い。悪いものは悪い」と真剣に語るその姿勢。それはまさに父・尾崎行雄がそうであったように「誰が正しいかではなく、何が正しいか」を常に考える相馬さんの強い信念からくるものでした。

出会った当初、「雲の上」の相馬さんにいつも緊張し、遠慮し、思ったことをなかなか口に出せなかった私に、相馬さんは痺れを切らして怒鳴りました。

「石田さん、言いたいことがあったらハッキリ言いなさい! あなたは私の『教え子』じゃなくて、日本の未来と、財団のやるべきことを一緒に考える『パートナー』なんですよ! わかってますか!」

それ以来私は、生来の気性もあってか、相馬さんに対して、言いたいこと、言うべきことは遠慮せずに言う、強く言う、強過ぎるくらい言うようになりました。すると、相馬さんから「倍返し」。私もまた「倍返し」――毎日のように「白熱した議論」をしていました。(他のスタッフからは、二人は「喧嘩」しているように見えていたそうです)

そんな日々が2年ほど続いた1998年。
いつものように相馬さんと、ああでもない、こうでもないと議論している時、なんとなく以前から(ぼんやりと)考えていたアイデアを口にしました。尾崎行雄の雅号・咢堂(がくどう)の名を冠した「咢堂塾」です。

相馬さんはすぐに興味を示してくれて、「具体的に聞かせて!」と言ってくれたのですが、「なんとなく」「ぼんやり」としか考えていなかったので、口ごもってしまいました。するとまた相馬さんの怒声が。

「石田さん、本当に大事なことは、思いつきで(思いついたまま)口に出すもんじゃありません! 自分の頭でよく練って、考え抜いて言葉にしなさい。そして、言葉にしたら、行動しなさい!」

その年、第1期「咢堂塾」が開講しました。

あれから20年。多くの支援者・協力者、講師陣、そして累計550名を超える塾生たちに支えられ、咢堂塾は今年「成人式」を迎えます。

不偏不党の咢堂塾。
異なる意見・主義主張にも触れながら、「誰が正しいかではなく、何が正しいか」を自分の頭でしっかりと考え抜く。
「独り善がり」や「思い込み」でないか――常に自らの信念を見つめ直し、磨き、強くしていく。

そして日本のため世界のために何ができるか――自ら志を立て、「できることから始める」。

尾崎行雄と相馬雪香の「心の力」「言葉の力」「行動する力」を身につけ、有権者として、地域リーダーとして、政治家として、NGOとして、会社員として、学生として、それぞれの立場・分野で、「できることから始める」。

相馬雪香さんの遺志・哲学をしっかりと受け継ぎ、この5月から第20期「咢堂塾」が始まります。

→ 「咢堂塾」第20期生募集中(尾崎財団ホームページ)


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長峯基先生の人間学講義

本日の「咢堂塾」では、元参議院議員で総理府総括政務次官(現・内閣府副大臣)を務められた長峯基(ながみね・もとい)先生にご講演を頂きました。

毎回、永田町で開催する「咢堂塾」では、専門家による講義と塾生同士のディスカッションを通じて、政治・政策に関する知識を深めます。しかし、それだけでは意味がありません。そこで学んだ知識を、何のために、どう生かすか――それを問い続け、自らの信念と使命を固めていく場が「咢堂塾」です。

長峯先生の人間学講義は、まさに「咢堂塾」に魂を入れるものと言えます。

本日の講義で、長峯先生が真っ先に挙げられた『論語』の言葉。
「君子は義に喩(さと)り、小人(しょうじん)は利に喩る」

自分の利益になるかどうかを考えるのではなく、何が公に正しい道かを考えて行動することの大切さ――まさにリーダーとして咢堂塾で学ぶ塾生が最も心得ておきたい言葉です。

長峯先生の講義では、『論語』や『言志四緑』(佐藤一斎)などが取り上げられます。ご存じの通り、それらを扱った本は巷に溢れ、また多くの識者が「語って」います。

なぜ、尾崎財団「咢堂塾」は、長峯先生をお招きするのか――。
それは、長峯先生が、論語の「語り部」ではなく、「実践者」だからです。

政治家として、また一人の人間として、どこまでも純粋に「世のため、人のため」という思いで行動し続け、様々な経験を積まれた長峯先生の言葉だからこそ、論語や言志四緑の「一文」が輝き、説得力を持つのです。

実践者であり、また後進を育てる教育者でもある長峯先生に、これからも大いにご指導を賜りたいと思います。


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プロフィール

石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
    理事・事務局長
**********************

【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
(2013年)


石田尊昭 心の力
石田尊昭著『心の力』
(2011年)


50の言葉
石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
(2009年)


咢堂言行録
石田尊昭/谷本晴樹著
『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
(2010年)


石田著作
相馬雪香・富田信男他編
石田尊昭(年譜編纂)
『咢堂 尾崎行雄』
(2000年)

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