「世界共同主義の必要」―尾崎咢堂言行録(18)

第一次世界大戦後のヨーロッパを視察し、その惨状を目の当たりにした尾崎は強く思った―「戦争は、勝っても負けても悲惨な爪痕を残す。そして人々は不幸になる」と。以後、尾崎は軍縮・不戦運動を展開していく。

戦争は、国家・国益を前面に掲げた国家至上主義によってもたらされるとして、それを厳しく批判。かわって国際協調主義の必要性を強く説いた。そこには、世界的「共生」をいかに図るかという視点があった。

以下は、「世界共同主義」と名付けて書かれたものである。この考え方が、後に尾崎が提唱する「世界連邦」の原点であったかもしれない。

これが書かれたその年、日本は国際連盟を脱退し、国際的孤立化の道を歩んでいく。

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「世界共同主義の必要」

文化の進むにつれて、人類の働く舞台は一歩一歩広く大きくなる。酋長時代には、各々その部落のために働けば、それでよかったのだが、封建時代には、その舞台が大きくなって、各々その藩のために働く必要が起こった。文化が更に進んで、民族が国家を組織するに至れば、全国のために働かなければならぬ。その人民には、国民教育を施して、全国のために働くよう育てあげなければならぬ。…

個人も、幼少の時は小さな衣服が適当であるが、漸次成長するに従って、大きな衣服に取り換えなければならない。民族もその通りで、人口が増加し知識が発達するに従って、その領域を拡張しなければならない。民族の住域は、個人の衣服とほぼ同様のものである。のみならず、衣服は年を経ても縮小はしないが、地域は文明の進歩に従って大いに縮小するから、民族の住居区域は、個人の衣服以上にこれを拡大する必要が起こる。これ前段に述べた通り、部落生活より封建生活に進み、封建生活より更に国家生活に進んだ所以である。然るに国家という衣服も、今日は既に狭小すぎるようになった。…

…現在の文化世界においては、往時の如く他国の領土を奪掠することは、自他の良心が許さない。文明が没落しない限り、将来は益々そうなるに決まっている。そればかりでなく、英米の如く広大な領域を持っている国民ですら、自給自足主義で繁昌することは出来なくなった。…

かくて文化の進歩は、内外二様の作用によって、人類の活動区域の拡張を促して止まない。従って現在の国家時代においても、独り大人物のみならず、国民全体が既に国家以上の広大なる活動舞台を要求し、国家はまたその存立の必要上、これを奨励しなければならぬことになる。…

現在では国家の延長として活動舞台の拡張を企図するものが多いが、将来はその延長でなく、諸国家の共助連合によって、この目的を達するように変更改善しなければならぬ。国家延長主義で進めば必ず国家間の衝突となり戦争となる。

…国家的割拠は、封建的割拠をいささか拡大しただけで、その主義精神において大した相違はない。…とにかく文化の進運は先に封建的割拠を改善して国家時代となした。将来は国家的割拠を改善して、世界共同主義となさねばならぬ。

以上、『墓標に代えて』(1933年・昭和8年)より抜粋

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プロフィール

石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
    理事・事務局長
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【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
(2013年)


石田尊昭 心の力
石田尊昭著『心の力』
(2011年)


50の言葉
石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
(2009年)


咢堂言行録
石田尊昭/谷本晴樹著
『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
(2010年)


石田著作
相馬雪香・富田信男他編
石田尊昭(年譜編纂)
『咢堂 尾崎行雄』
(2000年)

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