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「熟議の国会」―議会の父・尾崎行雄を想起せよ

菅直人首相が所信表明演説の中で強調した「熟議の国会」。熟議とは文字通り「熟慮し議論する」ことである。

近年、熟議民主主義という考え方が注目されているが、その最大の特徴は、熟慮と議論のプロセスを通じて、互いの意見・判断が変わっていく可能性を重視していることである。そこでは、相手を単に批判したり論破したりするのではなく、合意に向けて知恵を出し合う姿勢が求められる。

国会という激しい利害対立と権力闘争の場に「熟議」を持ち込もうとするなど、空疎な理想論だと一蹴する向きも一部にはある。しかし、これまでの国会が「数の論理」に頼り過ぎ、実質的な議論の場にならず、「言論の府」の形骸化が指摘されて久しいことを考えれば、熟議の国会を試みることの意義は少なからずあるだろう。

憲政の神、議会の父と呼ばれた政治家・尾崎行雄(1858-1954)は、今からおよそ百年前、当時の国会のあり方について、次のように批判している。

「衆議院にしていやしくも立言議定の府ならんや、その最も貴ぶところは言論せざるべからず。しかるに我が衆議院及び世間は常に言論を侮蔑し、欧米にあっては討論数各夜にわたるべき大問題も、我が国にては数時間以上の討論を許さず。賛否の議論、未だ半ばに至らざるにあたって、討論終結の声、すでに四方に湧く。我が衆議院は衆議院にあらずして表決院なり、我が国には表決堂ありて議事堂なし。」

これは、当時にしてすでに国会が形骸化していることを示している。議論の中身ではなく、議会を構成する勢力によって、話し合う前から法案の可否が決まっているのでは、議論する意味がまったくない。

さらに尾崎は、議会の本質について、次のように述べている。

「一般人民から選ばれた代表が一堂に会して会議を開くのは、何のためであるか。いうまでもなく、それらの代表が、どうすれば国家の安全と繁栄が期せられるかという立場にたって、思う存分に意見をたたかわし、これを緊張した各代表が、何者にも縛られない完全に自由な良心を持って、議案の是非善悪を判断した結果、多数の賛成を得た意見を取り上げて、民意を政治に反映させるためである。故に真正の会議においては、少数党の言い分でも、正しければ多数の賛成を得て可決せられ、多数党から出した議案でも、議場の討論において、多数議員の良心を引き寄せることができなければ否決せられるのでなければならぬ。」

この考えは、先に述べた熟議民主主義の特徴、つまり議論のプロセスによって互いの判断が変わる可能性を重視していることに通じる。

「熟議の国会」。いわゆる「ねじれ国会」への対症療法として打ち出された感は否めないが、「数の論理」を超えた国会のあり方を模索する重要な問題提起として捉え直せば、民主政治の成熟に繋がる可能性もあるのではないか。

ここで注視すべきは、政治に対する、われわれ市民の側の「目」である。熟議のプロセスには、派手なパフォーマンスもなければ、二者択一的な分かり易さもないだろう。時として、非効率に思えることすらあるかもしれない。市民には、それをじっくりと見守り、自らも当事者として熟慮していく姿勢が求められる。

今年は、日本に国会が開設され、ちょうど120周年にあたる。「熟議」をキーワードに、今一度、国会のあり方、さらには政治に対するわれわれの見方を問い直してみてはどうだろうか。

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プロフィール

石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
    理事・事務局長
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【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
(2013年)


石田尊昭 心の力
石田尊昭著『心の力』
(2011年)


50の言葉
石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
(2009年)


咢堂言行録
石田尊昭/谷本晴樹著
『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
(2010年)


石田著作
相馬雪香・富田信男他編
石田尊昭(年譜編纂)
『咢堂 尾崎行雄』
(2000年)

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