「忠孝愛国は人間の本能」―尾崎咢堂言行録(39)

国民を納得させる政治もせずに愛国心を教え込もうとすれば、恰好だけはできるが、国家をわがものとして愛する情熱をかきたてることはできない、と尾崎は言う。

民意に立脚した良い政治が行なわれ、住みよい社会と家族の平穏無事が守られれば、自らの国・社会を愛する心は自然と湧き起こる。――非常時に国家の名のもとで行なわれる愛国心教育よりも、平常時に、真の民主政治を促す民主教育を行なうことの重要性を尾崎は説き続けた。

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「忠孝愛国は人間の本能」

忠も孝も、みな、国乱れて忠臣あらわれ、家貧しくして孝子が出るという流儀になって、天下泰平の場合の忠君愛国の道は、ほとんど教えない。戦争にのぞみ、命を鳥の羽のように軽んじて討死することを忠君愛国だとは教えるが、選挙にのぞみ、投票を売買することが不忠不義の売国行為であることを、真剣に教えてはいない。

孝もその通りで、家が貧しいとか、一家が不幸な目にあったとか、ともかく一家が平常な状態でない場合に、その子がその親に捧げるまことを孝行の見本のように教えるから、幸福の家庭では親孝行はできないもののように勘違いするものができる。

忠孝乃至愛国そのこと自体はいいことに違いないが、そんなことは国家が骨を折って教えなくても、人間なみの情操を持つ人なら、自然に、あるいは本能的に誰でも実行できること、また現に実行していることであって、ことさら国家が骨を折って教えるほどのことではない。

要するに、平常時に処する教育において、人間を奴隷扱いせず、人間らしい情操を養うことに努め、かつ真に民意に立脚した、いい政治が行なわれておりさえすれば、忠孝愛国というようなことに力こぶを入れて教育しなくても、一旦緩急あれば、忠臣孝子愛国者は雲のごとく湧いてくるから心配は無用だ。それよりも、家内安全、天下泰平の世に処する教育に力を入れよ。それが民主教育のあり方だと私は思う。

以上『民主政治読本』(1947年・昭和22年)より


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石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
    理事・事務局長
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【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
(2013年)


石田尊昭 心の力
石田尊昭著『心の力』
(2011年)


50の言葉
石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
(2009年)


咢堂言行録
石田尊昭/谷本晴樹著
『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
(2010年)


石田著作
相馬雪香・富田信男他編
石田尊昭(年譜編纂)
『咢堂 尾崎行雄』
(2000年)

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