「戦後二度目の自治体選挙によせて」―尾崎咢堂言行録(42)

尾崎は、民主政治を選挙中心の政治であると言い、ゆえに有権者中心の政治であると言った。

その国の将来は、まさに有権者一人ひとりの判断と行動にかかっているという尾崎の指摘は、民主主義の厳しさを表している。国を生かすも殺すも、われわれ有権者次第というわけだ。

以下は、有権者と候補者との関係について、その意識のあり方を述べたものである。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「戦後二度目の自治体選挙によせて」

日本の選挙は、久しい以前から、運動費の豊富な候補者でなければ、勝ちにくいという落とし穴があった。そのため真の民衆の代表者が選ばれずに、金持ちの代弁者や、使った選挙費用の回収と次の選挙費用の出所をねらうことに没頭する利権屋が幅を利かせる弊害があった。

この四月には、戦後二回目の都府県知事、市長村長、および都府県市町村会の議員の選挙が行なわれる。

自治体の議員は、台所の番人だから、なるべく摘み食いをしないような正直な番人を頼まねばならぬ。番人を頼む場合は、こちらから番人になってくださいと頼むのが常識で、その場合必要な費用は、主人公である有権者が持ち寄るべきであることも、これまた、人を頼むときの常識でなければならぬ。

イギリスのマコーレー卿が代議士の候補者に立ったとき、選挙区民に送った書面は、現にイギリスの公民教育のテキストに使われているほど有名な文献であるが、四月選挙にのぞむ候補者と有権者にとって、一考の価値ありと信ずる。いわく、

「…元来投票してくださいと頼むことは、よくないことで、立憲政治の道にそむいている。選挙権は、私情によって人に頼むべきものでもなければ、また人に与えるべきものでもない。よい代議士を選ぶことは、あなた方のためである。私の意見にご賛成なら、私のためよりか、むしろ、あなた方のために、私に投票されるといい」云々。

これは今から百年以上も前に書かれた宣言だが、もしも我が国で候補者がこんなことを言うものなら、今日でも理想家、空想家として排斥されるのはまだしも、高慢ちきな奴だ、頭が高い、生意気な奴だと非難攻撃されて、落選すること必定であろう。しかしイギリスの有権者は、決して彼を見捨てなかった。

民主主義の政治は、こうした候補者と、こうした選挙民があって、はじめて実を結ぶ政治である。

以上、『日本評論』(1951年4月号)より


↓いろいろな人のブログがご覧頂けます
にほんブログ村 歴史ブログ 偉人・歴史上の人物へ
にほんブログ村

→ 「石田尊昭オフィシャルウェブサイト」
スポンサーサイト
プロフィール

石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
    理事・事務局長
**********************

【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
(2013年)


石田尊昭 心の力
石田尊昭著『心の力』
(2011年)


50の言葉
石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
(2009年)


咢堂言行録
石田尊昭/谷本晴樹著
『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
(2010年)


石田著作
相馬雪香・富田信男他編
石田尊昭(年譜編纂)
『咢堂 尾崎行雄』
(2000年)

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
リンク
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード