「知識経験の増加と体力の減少」

尾崎行雄の「人生の本舞台」――前回の続きです。

年齢が増えれば、それだけ知識経験も増加し、その蓄積された知識経験は、各年齢に相応しい「生かし方」があると尾崎は言います。
そして、「かく両者(青壮年と老人)各々その長所を守って互いに相侵さなければ、双方ともに大いに利益を得ることが出来る」と。

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「知識経験の増加と体力の減少」

「人間の知識経験は、御説のごとく、年齢の増加とともに増加するに相違ないが、それと同時に体力は必ず減少する。体力が減少すれば知識経験が、いかに増加しても、思う存分にこれを運用することは出来ない」と論駁する人があろう。いかにもその通りである。しかし、体力旺盛な壮年時代には、客気や邪欲もまた旺盛であって、その思慮分別を撹乱するのみならず、必要もないのに、人と衝突論争し、それがため、事業の進行を妨害せられることもある。これに反して、体力減退する頃は、客気や邪欲も、無益の衝突論争も減退するから、場合によっては、差引利益勘定の方が、多くなることもある。

「それはそうかも知れないが、いつまでも、老人に頑張っておられては、後進者の出世口が塞がる」と非難するものがあろう。これも至極もっともな心配ではあるが、老人と後進者とは、その能力と、働き場所とが違うから、左まで心配するには及ばない。老人の長所は、多年蓄積した所の知識経験にあるが、後進者の長所は、これを運用する活動力にある。故に老人は政界、事業界、その他いずれの方面においても顧問的地位に立ち、その豊富な知識経験を後進者に授けて縦横無害に活用せしむべきである。

かく両者各々その長所を守って互いに相侵さなければ、双方ともに大いに利益を得ることが出来る。しかるに青壮年は老人を忌避し、老人は、冷水浴的空元気を出すか、あるいは自ら隠退するか、二者いずれかに出るがため、先進後進ともに大いに損失し、それが延いて国家の損失となり、世界人類の大損失となるのである。

以上、『人生の本舞台』(1935年・昭和10年)より
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プロフィール

石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
    理事・事務局長
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【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
(2013年)


石田尊昭 心の力
石田尊昭著『心の力』
(2011年)


50の言葉
石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
(2009年)


咢堂言行録
石田尊昭/谷本晴樹著
『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
(2010年)


石田著作
相馬雪香・富田信男他編
石田尊昭(年譜編纂)
『咢堂 尾崎行雄』
(2000年)

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