尾崎行雄「婦人参政」への思い

1947年、日本国憲法が施行された年に出版された、尾崎行雄の『民主政治読本』。
そこには、女性の政治参加に期待を寄せる尾崎の思いが書かれています。
以下、『民主政治読本 復刻版』第6章「婦人参政」から一部抜粋します。

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「婦人参政」

…わが国の婦人は、ほとんど何の苦労もせず、運動もせず、敗戦後の夢うつつのうちに全く男と平等の参政権を手に入れた。嬉しいと思うより、寝耳に水で、驚き戸惑ったのも無理はない。昔は戦争に敗れて奴隷にされた例も多いのに、今度は、婦人は奴隷の境遇から人間の境遇に浮かび上がったのである。誠に不思議な敗戦ではないか。

…ただし、わが国の婦人は、あまりにもたやすく、ただでこの参政権をもらったので、この権利の本当の値打ちがまだわからないかもしれない。したがって、その効力を十分に発揮するように使いこなすことができないのではないかという心配はある。

しかし、先にも述べた通り、この参政権は決してただでもらったのではない。何十万、何百万という兵隊の命と1000億の戦費、幾多の都会を焼け野原にした等、数え切れないほどの高い代償を払って手に入れた宝物だ。この宝物を使って、二度と再びこんな悲惨な戦争は決してしないという平和な国をつくることが、この戦争の犠牲になって死んでいったあなた方の夫・子・父・兄弟・いとこ・おじ・おい等々の霊を慰め、その死を意義あるものにする唯一の方法である。平和を愛する心は、ほとんど婦人の本能である。日本婦人が思いがけない参政権を与えられたのは、婦人が平和日本をつくる原動力になれという天意のあらわれであろう。

…男女全く同権の新憲法はできたが、わが国現在の家庭には、まだ何の変化も起こっていない。旧態依然とした弱肉強食の封建思想が支配している家庭である。こういう家庭に寝起きし飲食している者が、選挙にのぞみ候補者となり、議員となって国会に出た時、そこだけ立憲的動作をなしうるはずがない。国政を民主的に料理しようとするならば、まず家庭を民主的に改造しなければならない。この家庭の民主化こそ、参政権を持った婦人が、愛情と勇気を持って成し遂げなければならない大事業であると思う。

…参政権とは、代表者を選ぶ権利であると同時に、代表者として選ばれる権利である。国会・都議会・府県会・市町村会の議員として、または知事・市長・村長として、婦人がどしどし進出してくることは望ましいことである。特に市町村会のような手近な自治機関に、婦人の勢力が深く食い込むことは、日本民主化の地固めとして、誠に結構なことだと思う。そこには婦人でなければ気がつかない、男では行き届かない、婦人の細かい心遣いを必要とする幾多の重大な問題がある。例えば小学校の教育問題、託児所の問題、育児の問題、風紀衛生の問題等々、特に近頃の配給の問題などは、どうしても婦人のほうが行き届くわけである。婦人の活動を待つ舞台はなかなか広い。

以上、『民主政治読本 復刻版』より
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プロフィール

石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
    理事・事務局長
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【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
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石田尊昭著『心の力』
(2011年)


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石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
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『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
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『咢堂 尾崎行雄』
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