尾崎行雄の民主教育8項目(前編)

封建主義を廃し、立憲主義・民主主義を日本に根付かせるため、民主教育の重要性を説き続けた尾崎行雄。

日本国憲法施行の年に「民主主義のテキスト」として書かれた『民主政治読本』には、尾崎の民主教育に対する考えが詳細に述べられています。

その全8項目について、一部割愛したものを2回(前編と後編)に分けて掲載します。

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尾崎行雄の民主教育8項目(前編)

(1)世界中から尊敬され愛される人間をつくるには、知力・体力・徳力のつり合いのとれた教育を施さなければならないことは言うまでもない。…徳力向上の教育とは、もちろん、「忠・孝・仁・義・礼・智・信」というような決まり文句を、ただ観念的に注ぎ込むことではない。物事の正邪善悪を判別する判断力を与え、自分で正なり善なりと判断したら、一身上の利害をかえりみず、断じてこれを守り抜き、自分で邪なり悪なりと判断したら、一身上の損得をかえりみず、断じてこれを排撃する。その勇気と実行力を養うことである。

(2) …民主主義は個人の自由・権利を尊重する。しかし、いかに個人の自由・権利を尊重しても、他人の自由・権利を侵してまで、個人のそれを主張していいはずはない。…近頃、民主主義をはき違えて、自分の、または少数団体の欲望を満たすために、他の多数の迷惑をかえりみず、わがまま勝手をふるまう心得違いの者がだいぶ増えたようだ。こういう不心得者に、正邪善悪の物差しを教え込むことが、民主教育の一大使命である。

(3) 日本が立派な平和国家・文化国家になりさえすれば、世界中の門は日本のために開かれるであろうことは、疑いを入れない。…日本は世界から物を取ろうとして失敗した。今度は世界人類に、値打ちのある文化を与えて名誉回復をしなければならない。そのためにも、まずは敗戦で意気消沈し自尊心を失ったわが国民に対して、大いに興国の気概を鼓舞し、敗れても屈しない大国民の性格を養成すること、それが民主教育の当面の大使命だと思う。

(4) 日本の教育は、これまで生きることよりも死ぬことを教えた。自尊心よりも卑下心を教えた。人間は生命・財産の持ち主であることを教えずに、生命・財産は天皇のもの、国家のものと教えた。つまり非常時に対応する教育を重視し、平常時に対応する教育は軽視された。…しかし、今日以後の民主教育は、全くこれを逆にして、平常時教育を主とし、非常時教育は従のまた従くらいにしなければならない。…要するに、平常時の教育において、人間を奴隷扱いせず、人間らしい情操を養うことに努め、且つ、真に民意に立脚した、いい政治が行なわれていることが重要なのである。それが行なわれてさえいれば、特段、忠孝愛国ということに力を入れて教育しなくても、ひとたび大事が起これば、忠臣・孝子・愛国者は、雲のようにわいてくるから心配は無用だ。それよりも家内安全、天下泰平の世に対応する教育に力を用いよ。それが民主教育のあり方だと私は思う。

(後編に続く)

以上、『民主政治読本 復刻版』より

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プロフィール

石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
    理事・事務局長
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【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
(2013年)


石田尊昭 心の力
石田尊昭著『心の力』
(2011年)


50の言葉
石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
(2009年)


咢堂言行録
石田尊昭/谷本晴樹著
『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
(2010年)


石田著作
相馬雪香・富田信男他編
石田尊昭(年譜編纂)
『咢堂 尾崎行雄』
(2000年)

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