安保法案と立憲主義

去る9月9日、民主党・枝野幹事長が記者会見で安保法案の成立プロセスに触れ、安倍政権のやり方を「立憲主義の破壊だ」と厳しく批判しました。

「立憲主義の破壊」――。昨年7月1日の閣議決定以降、「立憲主義」という言葉がクローズアップされ、私たち一般市民もその言葉に触れる機会が急激に増えたように思います。

言うまでもなく、尾崎行雄と立憲主義は、切っても切れない関係です。
尾崎は、立憲主義に基づく政治(立憲政治)が日本に根付くことを目指しました。そして立憲政治の目的を「国家の存続・繁栄と国民の幸福」であるとしました。

立憲主義とは、個人の自由と権利を保障すべく、憲法によって国家権力を制限するという考え方です。つまり、時の権力者が勝手気ままに国民の生命・財産、自由・権利を奪うことができないように、その「力」を憲法で縛る、というものです。

もちろん、当時の大日本帝国憲法と現在の日本国憲法とでは主権体制が異なるため、全く同列に論じることはできませんが、尾崎は「個人の自由・権利を保障する」ことが「国家の存続・繁栄と国民の幸福」に繋がると考え、それを「君意民心の一致」のもとで何とか実現しようと試み、努力したわけです。

しかし周知のとおり、保安条例(1887年~98年)、治安警察法(1900年~)、国家総動員法(1938年~)、大政翼賛会(1940年~)、治安維持法(1941年~)、戦時刑事特別法(1942年~)等々、政府の意に反する言論や行動を厳しく取り締まる法律や仕組みができあがります。投獄、拷問、言論統制…。国民の自由と権利を奪い、生命を脅かし、政府を批判する議員は当選させないような仕組みをつくる、まさに「立憲主義の破壊」が行われました。

さて、冒頭の枝野議員による、安保法案成立プロセスにおける安倍政権批判。
昨年からの閣議決定、総選挙の実施、衆参両院での審議(および60日ルール適用の可能性)というプロセスが、国民の権利と自由を奪い、生命を脅かしながら進められた「立憲主義の破壊行為」とまで言えるかどうかは、議論の余地があるでしょう。

他方、そうしたプロセスよりも、法案の中身自体が「立憲主義の目的」に沿っているか否か、すなわち国民の生命・財産、自由と権利を守るものかどうか、(尾崎の言葉を借りるなら)国家の存続・繁栄と国民の幸福に繋がるものかどうか、という視点から判断することが重要だと思います。それは、この安保法案が示す脅威認識、想定する事態や実施体制の妥当性、また効果の高低や実現可能性など、安全保障の具体的内容を現実的視点から評価・判断することにほかなりません。


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石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
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【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
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石田尊昭 心の力
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(2011年)


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石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
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『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
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