「人生の本舞台は常に将来に在り」―尾崎咢堂言行録(12)

尾崎行雄(1858―1954)は、1890年の第1回総選挙で衆議院議員となり、以来、連続当選25回、議員生活60有余年という記録を打ち立てた。

長ければ良い、というものではない。尾崎の「今日的意義」は、その最長記録にあるのではなく、政治家としての理念・取り組み・生き方にある。

とはいえ、没する前年(1953年)に「初落選」するまで、自らの政治信念を説き続け、政治家や有権者に影響を与え続けた姿は、まさに「生涯現役」と呼ぶにふさわしい。

尾崎の言行を振り返ると、改めて気付かされることがある。
年を重ねるごとに当然肉体は老い衰えていくにもかかわらず、それに反比例して気概が強まり、晩年20年は、文字通り命を懸けた言動が激しさを増していく。

その尾崎の気概、強靭さはどこからくるのだろうか。

亡くなる20年前、尾崎は以下の考えを示した。
その中に一端を垣間見ることができるかもしれない。

ちなみに、「人生の本舞台は常に将来に在り」は、憲政記念館(旧尾崎記念会館)入口に建つ石碑にも刻まれ、尾崎の代表的な言葉の一つとして、多くの人々に好まれている。

尾崎三女の相馬雪香さんも、この言葉をよく使い、自身も「生涯現役」を貫いた。

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「人生の本舞台は常に将来に在り」

六、七十歳までの間に蓄積した金銀財宝を、子孫にも譲らず、社会にも寄附せず、これを焼き捨てて、隠退する人があったなら、世間はこれを何と評するだろう。多分馬鹿か気狂いと言うであろう。知識経験は金銀財宝よりも貴い。然るに世間には、六、七十歳以後は此の貴重物を利用せずに隠退する人がある。馬鹿や気狂い以上の「たわけもの」ではあるまいか。
 
金銀財宝は、他人に譲ることが出来るが、知識経験は、それが出来ない。故に死ぬ瞬間まで自分でこれを使用しなければならぬ。然らざれば、一生蓄積したものを放棄して、馬鹿や狂気者以上の「たわけもの」となるわけだ。

有形の資産は、老年に及んで、喪失することもあるが、無形の財産たる知識経験は、年と共に増すばかりで、死ぬ前が、最も豊富な時である。故に最後まで、利用の道を考えねばならぬ。

この信念を推究すれば、「人生の本領は未来に在り」ということになる。言い換えれば「昨日までは、人生の序幕で、今日以後がその本舞台だ」ということになる。

世間もし私同様にこの信念を起すものあらば、その人は再生の境地に入るであろう。これが為、世を利し、人を益すること、測り知るべからざるものがあろう。これ私がこの小冊子を刊行して、世に問う所以である。

以上、『人生の本舞台』(1935年・昭和10年)より抜粋

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プロフィール

石田尊昭

Author:石田尊昭
    尾崎行雄記念財団
    理事・事務局長
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【著書一覧】

石田尊昭
石田尊昭著『18歳からの投票心得10カ条』
(2016年)



尾崎行雄著/石田尊昭・高橋大輔編『人生の本舞台 復刻版』
(2014年)


民主政治読本 復刻版
尾崎行雄著/石田尊昭解説・編『民主政治読本』
(2013年)



田村重信編・石田尊昭・高橋大輔・高橋富代・小西孝実『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』
(2013年)


石田尊昭 心の力
石田尊昭著『心の力』
(2011年)


50の言葉
石田尊昭著『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』
(2009年)


咢堂言行録
石田尊昭/谷本晴樹著
『咢堂言行録 尾崎行雄の理念と言葉』
(2010年)


石田著作
相馬雪香・富田信男他編
石田尊昭(年譜編纂)
『咢堂 尾崎行雄』
(2000年)

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